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就労ビザ転職の手続きと届出|中途採用で見落とされがちな14日ルール

「中途採用してもそのまま働いてもらって大丈夫だろう」
中途採用の現場でよくあるこの判断は、実は最も危険な誤解です。在留期間が残っていても、前の会社での許可が、新しい会社でも有効とは限りません。
業務内容が在留資格の範囲を外れていた場合、企業側は 「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」 に問われるリスクを負います。本記事では、転職時に必ず確認すべき共通ルールと、更新で不許可にならないための実務上のポイントを解説します。
ビザが「そのまま使えるケース」と「変更が必要なケース」
中途採用でまず確認すべきは、「今持っている在留資格の名称」と「自社で従事させる職務内容」 の整合性です。ここを取り違えると、本人だけでなく企業側も法的リスクを負うことになります。
在留資格の「変更」が不要なケース
前職と転職先での仕事内容が、同じ在留資格の範囲内」かつ「本人の学歴・専門性と合致」している場合です。
例:IT企業のエンジニア(技術・人文知識・国際業務)→ 別のIT企業のプログラマー(技術・人文知識・国際業務)
この場合、新たにビザを取り直す必要はなく、現在の在留カードのまま就労を開始できます。
同じ資格名でも「仕事の中身」が変わる場合は要注意!
同じ「技術・人文知識・国際業務(技人国)」であっても、前職は「通訳」、転職先は「マーケティング・営業」のように職務内容が大きく変わる場合は、変更申請が不要でもリスクは残ります。本人の専攻と新しい仕事に親和性がないと、入管は「その仕事をする資格がない」と判断するためです。
「資格名が同じだから大丈夫」と安易に考えず、「本人のバックグラウンドとその仕事が法的にマッチしているか」の再確認が必須です。
在留資格の「変更」が必要なケース
仕事内容が、現在の在留資格のカテゴリーを外れてしまう場合です。
例:レストランのホールスタッフ(特定技能)→ 貿易会社の貿易事務(技術・人文知識・国際業務)
この場合は、就労開始前に 「在留資格変更許可申請」 を行い、許可を得なければなりません。許可が出る前に働かせてしまうと、即座に不法就労となります。
変更が必要となる重要な例外:高度専門職は「区分」に注意
高度専門職の場合、在留資格の名称が同じ「高度専門職1号」であっても、活動内容(イ・ロ・ハ)が異なれば 在留資格変更許可申請が必要 です。
- イ:高度学術研究活動(教授・研究など)
- ロ:高度専門・技術活動(エンジニア・営業など)
- ハ:高度経営・管理活動(社長・取締役など)
例:高度専門職1号ロ(エンジニア) から 転職先で事業部長(高度専門職1号ハ相当)になる場合
名称は同じでも、法務大臣が指定する活動内容が異なるため、働き始める前に変更申請を行わなければなりません。
高度専門職を採用する際は、現在の指定書の内容を必ず専門家と確認してください。
義務|入管への「所属機関に関する届出」は14日以内
意外と忘れがちなのが、入管への届出義務です。転職した外国人は、以下の事由が発生してから 14日以内 に入管へ届け出なければなりません。
- 契約終了(退職)
- 契約締結(入社)
現在、この手続きは 「出入国在留管理庁 電子届出システム」 を利用して、オンラインで24時間いつでも完結可能です。
※企業側が行う 「ハローワークへの外国人雇用状況届出」 とは全く別物です。本人任せにせず、企業側が本人に必ず完了確認を行ってください。
現行運用での重要ポイント|電子届出の厳格化
現行の運用では、電子届出において マイナンバーとの紐付け確認が必須 となっています。届出漏れがある場合、本人と企業の双方に 自動警告通知 が送信される仕組みとなっており、これを放置した結果、更新審査で 「届出義務違反」 を理由に不利益な判断(在留期間の短縮や不許可)がなされるケースが実務上増加しています。
さらに、2026年3月より、システム上で「直近3年間の納付履歴自動照会」が開始されます。届出と同時に税金・社会保険の状況が即座に確認されるため、事前チェックがより一層不可欠となっています。
リスク回避の決定打|「就労資格証明書」を取得すべき理由
「仕事内容は似ているから、変更申請は不要だろう」 この企業の自己判断には、大きなリスクが潜んでいます。なぜなら、その仕事が在留資格の範囲内かどうかを最終的に判断するのは 入管 だからです。
そこで有効なのが、「就労資格証明書」 の交付申請です。これは入管が「この外国人は、新しい会社でこの仕事をしても問題ない」と公式に認める お墨付きの書類です。
現在、この手続きは電子申請にも対応しており、標準処理期間が大幅に短縮される運用が採られています。取得は任意ですが、メリットは非常に大きいと言えます。
【メリット】
✔ 不法就労助長罪のリスクを実質ゼロにできる
入管が事前に業務内容を精査し「OK」と判断するため、会社側が知らずに不法就労をさせてしまうリスクを完全に排除できます。
✔ 次回更新時に判断が覆るリスクを回避できる
最大のメリットは、「転職時の審査を、更新時期が来る前に前倒しで終わらせておける」 点にあります。
□ 証明書を取らない場合の「リスク」
転職して1年間しっかり働いた後の「更新時期」になって初めて、入管から「実はこの転職先の業務、ビザの対象外でした」と突きつけられるリスクがあります。この時点で不許可になれば、本人は即帰国、会社は貴重な戦力を突然失うことになります。
□ 証明書を取った場合の「安心」
転職した直後に「就労資格証明書」を取得しておけば、入管のデータベースに「この会社でのこの業務は許可済み」という記録が残ります。そのため、次回の更新審査は、実態が変わっていないかどうかの形式的な確認だけで済むようになります。
更新時の審査が「1〜2週間のスピード回答」で終わるケースが多いのも、この「事前のお墨付き(実質的な審査完了)」があるからこそ。企業の採用計画を確実に守るための、最強の防衛策と言えます。
注意|転職後の「更新申請」で不許可になる典型パターン
転職後に初めて迎える更新申請は、入管にとって 「新しい会社を初めて審査する場」 です。現行の審査運用では、特に以下の点が厳しく見られています。
- 職務内容の不一致:専門職として採用したが、実態は単純作業が中心。
- 公租公課・社会保険の未納:本人だけでなく、会社側の社会保険加入・納付状況も審査対象。
- 空白期間の放置:前職退職後、3ヶ月以上就労せずに滞在している場合、活動状況の正当性説明を求められ、不許可リスクが急上昇します。
【実務の視点】安易な「大丈夫」が招いた不法就労
前職で「通訳」として在留資格を取得していた外国人を、あるメーカーが「海外営業」として中途採用したケースです。会社側は「同じ技人国ビザだから問題ない」と判断し、就労資格証明書も取得せず就労させていました。
しかし更新時、入管から 「職務内容がマーケティング寄り」「本人の大学専攻との関連性が薄い」 と指摘され、更新不許可に。結果として、本人は帰国、会社も意図せず不法就労をさせていた状態となり、厳しい指導を受けることになりました。 「種類が同じ」という言葉を過信せず、自社の実務との適合性を精査すべきだった事例です。
まとめ|中途採用は「新しい会社での適合性」がすべて
就労ビザの中途採用で、企業が守るべき鉄則は次の3点です。
・今の在留資格で自社の業務ができるかを、内定前に診断する
・入社後14日以内に「所属機関に関する届出」を完了させる
・判断に迷う場合は「就労資格証明書」を取得して更新に備える
中途採用はスピードが重要ですが、確認を怠った結果の「後からの不許可」は、採用コストも時間もすべてを失う結果になりかねません。正しい確認こそが、最も安全で効率的な採用戦略です。

